後頭神経痛とは
大後頭神経痛、小後頭神経痛、大耳介神経痛の3つを併せて、後頭神経痛と呼びます。
症状
耳の後ろの後頭部の左右どちらか半分だけ、ここが痛いとご本人で明示できるような範囲に、強い痛みを感じます。頭全体の痛み、嘔気などは無いことが多いです。
病態
後頭神経痛は、頭皮の感覚神経に起こる「神経痛」です。神経痛は神経障害性疼痛とも呼ばれます。皮膚の神経が、何らかの理由で過敏になってしまい、ジリジリ、ジンジンとした独特の強い痛みを、不規則に繰り返し発生させます。場所は頭ですが、あくまで皮膚の神経ですので、痛みの他に深刻な事態にはなりません。
原因
何らかの理由で後頭神経が刺激されることで発生するとされています(血管による圧迫、けが(鞭打ち)、頭や首の手術、感染症(単純ヘルペス、帯状疱疹)、首の骨の異常(関節リウマチ、変形性頚椎症)など)が、原因不明のことが多いです。
検査
他の重要な疾患を鑑別するために行うもの、治療薬を安全に使用可能かを確認するために行います。
視診、触診:帯状疱疹、ヘルペスを鑑別。
MRI検査:椎骨動脈解離、脳腫瘍を鑑別。必ず受けて下さい。
血液検査:重症感染症、糖尿病性神経障害の有無、甲状腺機能障害、肝臓・腎臓機能のチェック。
神経障害性疼痛の仕組みと治療
怪我や腫れもの痛みなど、「炎症の痛み」は、感覚神経が痛みの情報を脳へ伝えます。一方、痛みを感じる部位そのものに問題がなく、感覚神経本体に異常が発生するものを、神経痛・神経障害性疼痛と呼び、椎間板ヘルニア、手術など古傷の痛み、歯痛などがあります。通常の痛みと原理が異なるため、痛み止めも普通の痛み止め(ロキソニン、イブなどのNSAIDs)は無効で、専用の神経障害疼痛治療薬を使います(例:プレガバリン「リリカ」、ミロガバリン「タリージェ」、アミトリプチリン「トリプタノール」等)。これらの薬は即効性が低く、また、人によりふらつきや眠気、嘔気が出るため、後頭神経痛の場合には必ずしも使用しません。効果が出る前に自然と治ってしまうことが多いからです。その他、痛みを止める作用はありませんが、神経の修復を目的に、ビタミンB12(メチコバール)の内服を使うこともあります。
注意
マッサージはしないでください。ほとんどの頭痛にマッサージは有効ですが、この時だけは刺激を避けましょう。痛みをこじらせてしまうと、痛みが数か月単位に長期化することがあります。
また後頭神経痛が始まった数日後に、同部位の皮膚に「できもの」が出現したら、それは帯状疱疹を強く疑います。帯状疱疹も神経障害性疼痛を起こす点は同じですが、抗ウイルス薬を追加することが多いです。異常を感じたらすぐに当院または皮膚科を受診してください。