当院で使う頻度の多い薬

このページの情報更新日:2024年2月13日 ※片頭痛治療薬記事の全面改訂

当院で使う頻度の多い薬ご自分が飲まれるお薬は、名前と薬効を是非とも把握されることをお勧め致します。
薬の名前は概ね次の3通りの表現があります。

①薬効による名称、②固有名詞(化学物質としての一般名)、③先発品の商品名
例えば、
①消炎鎮痛薬、②アセチルサリチル酸、③バファリン。
①抗ヒスタミン薬、②フェキソフェナジン塩酸塩、③アレグラ。
といった具合です。

なお、「ジェネリック」の名前は、「②の一般名」+「製造元会社」の名前がほとんどです。
『アセチルサリチル酸「九段」』『フェキソフェナジン「千代田」』のような感じです(実在しません)。
①、②、③全て覚えるのは大変ですから、まず①を、次に②か③を覚えることをお勧め致します。

現代の薬は非常に精密に設計されており、日々、新薬も誕生しています。「強い薬、弱い薬」といった分類はもはや不可能ですし、ナンセンスです。症状だけでなく、体質によって細かく使い分けることができるようになりました。最近はお薬手帳もスマホで管理できますし、受診の際は、これまでに使用したことのある薬を是非お伝え下さい。

頭痛薬と片頭痛治療薬

NSAIDs(エヌセイド、エヌセイズなどと呼びます)

NSAIDs(エヌセイド、エヌセイズなどと呼びます)いわゆる「鎮痛解熱剤」です。Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug(s)(非ステロイド性抗炎症薬)を略してNSAID(s)と言います。市販されているもののも多く、バファリン、イブ、ロキソニン、ブルフェン、ボルタレン、カロナール、セレコックスなどです。ほぼ同じ使い方で、共通の注意点は胃潰瘍と喘息です。毎日長年使い続けると腎障害に注意が要ります。セレコックスは胃への影響が少ない設計です。カロナールは厳密にはNSAIDsではなく、副作用が少なく、比較的安全とされます。巷には鎮痛作用の強さランキングのようなものが多々ありますが、個人差の方がずっと大きい印象があります。特に緊張型頭痛の場合は、原理的にも薬だけで痛みをゼロにすることが不可能ですから、一時しのぎとして使用し、過大な期待はしない方が良いでしょう。
とはいえ、全ての痛み止めの基本が、NSAIDsと言っても過言ではありません。
片頭痛の際には、原理的には効果はありませんが、片頭痛に緊張型頭痛が重なっていることもあり、NSAIDsが無効という訳ではありません。

片頭痛治療薬

「いまどき片頭痛に頭痛薬は使わない」という時代になってきました。というのも、片頭痛に対しては優れた専用の薬がたくさんあるからです。片頭痛治療薬は、「予防薬」と「急性期治療薬」に大別されます。順に見てみましょう。

予防薬

トリプタン・ジタンや痛み止めは、その場の頭痛をどうにかできても、次に起こる片頭痛を予防することはできません。毎日あるいは月に1回の使用で、片頭痛を予防する手段を、予防薬と呼びます。片頭痛は繰り返すほど、より起こしやすい体質になっていきます(習慣性片頭痛は年3%で慢性片頭痛に移行する)。また、片頭痛が起こる度に脳に傷がついてしまいます(積み重なると小さな脳梗塞となり、やがて認知機能にも影響する可能性がある)。

人生トータルでの片頭痛回数を減らすことが、現在の片頭痛治療の基本です。

予防薬の導入にあたっては、以下が必要です。

  • ・片頭痛回数を把握する
  • ・治療目標を設定する
  • ・予防薬のラインナップを知っておく
  • ・各予防薬の効果を正しく判定する
  • ・各予防薬の副作用を早期に発見し、リカバーする

現在のスタンダードは「月4回以上の片頭痛があったら導入、追加、増量」「月2回程度まで抑えれば安全圏(減薬してもぶり返しにくいことが期待できる)」と考えて良いと思います。そこを目指し、複数の予防薬を組み合わせます。

「片頭痛は予防薬でコントロールするもの」~現在の片頭痛治療は、予防薬ファーストと言うくらい、予防薬がとても大切です。そして予防薬のプロがいる場所を頭痛外来と呼んでも良いかもしれません。

 

予防薬は3種類に分類できます。中枢に作用するものと、末梢に作用するもの、痛み中枢に作用するものです。

中枢に作用するもの

片頭痛の発生源である大脳皮質へアプローチする薬です。「脳そのもの」という意味で中枢と表現します。脳に起こる悪い事を防ぐわけですから、脳保護という役目を持った、非常に大切な薬です。片頭痛の「回数を減らす薬」というイメージでも分かりやすいかと思います。

  • ・抗てんかん薬(バルプロ酸「デパケン・セレニカ」、トピラマート「トピナ」)
  • ・Ca拮抗薬(塩酸ロメリジン「ミグシス」など)
  • ・β遮断薬(プロプラノロール「インデラル」など)
末梢に作用するもの

三叉神経と血管のつなぎ目(神経血管接合部)では、CGRPという物質が放出されることで、片頭痛のズキズキとした痛みにつながります。「脳の外」という意味で、末梢に作用すると表現します。片頭痛の被害を軽減する(片頭痛が起きても軽く済む)という役割のある薬です。

  • ・CGRP関連製剤(「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」)
  • 2021年にデビューした上記3剤は、既に海外では片頭痛の第一選択(片頭痛に最初につかうべき薬という意味)とされています(欧州頭痛連盟ガイドライン2022年版など)。特設ページもご覧ください。

痛み中枢に作用するもの

片頭痛の薬ではありませんが、よく使う薬にアミトリプチリン「トリプタノール」という薬があります。これは、脳の中の「痛覚の中枢」に作用することで、痛みに対する過敏性が高すぎることを治療します。難しい言葉ですが、痛覚変調性疼痛、中枢性感作、慢性疼痛の治療薬であり、「痛くない日が1日もない」ような場合や、「薬物乱用頭痛の原因薬剤からの離脱(=市販薬の使い過ぎからの脱出)」の場合に使います。

 

急性期治療薬「レスキュー」(=トリプタン、ラスミジタン)

片頭痛発作の開始時に頓服で使う薬で、トリプタン・ジタン製剤を指します。トリプタン5種、ジタン1種があります。片頭痛以外のタイプの頭痛には効きません。
主な副作用は、中枢性のものは、眠気、めまい、ふらつき、脱力があり、末梢性のものは胸苦しさがあります。効果に優れるものほど中枢性の副作用が出やすい印象があります。

片麻痺性片頭痛の場合や、脳血管障害や冠動脈疾患のある方は、トリプタンは禁忌となり、ジタンを使用することになります。

効くまでの時間と、持続時間、副作用の感じ方が違いです。ご自身の発作のタイプや、飲むときの状況によって使い分けると良いでしょう。医師と一緒に、試行錯誤してご自身に合った飲み方を見つけましょう。当院では、「月経時と、その他」「自宅と、外出中」「仕事の日と、休みの日」「寝起きの発作と、それ以外」といった状況で2種類~3種類のトリプタン・ジタンを、状況によって使い分けている患者さんも多数いらっしゃいます。たまに、トリプタン・ジタンの全てが合わない方もいらっしゃいます。その場合は予防薬で片頭痛を抑え込む等の作戦を立てますのでご相談下さい。

スマトリプタン(イミグラン)

最も伝統のあるザ・トリプタン。内服・点鼻・注射の3種類のラインナップがあり、内服30分、点鼻15分、自己注射薬5~10分で効果が出るとされ、その順で副作用も強くでてきます。2時間程度で切れるので、すぐ効いてすぐ切れる印象。1回1~2錠。

リザトリプタン(マクサルト)

早く効いて早く切れます。水無しで内服可能。1錠で比較すると最速最強。1回1錠。

エレトリプタン(レルパックス)

スマトリプタン、リザトリプタンより「やさしめ」の印象。副作用が比較的少ないとされます。1回1~2錠。

ゾルミトリプタン(ゾーミック)

やや立ち上がりが遅いが、持続力がある。水無しで内服可能。1回1~2錠。

ナラトリプタン(アマージ)

ゆっくり穏やかな印象ですが、持続力が長い。月経時の片頭痛をターゲットに、NSAISsと併用する方法がある。1回1錠。

ラスミジタン(レイボー)
  • ・トリプタンの次世代型、ジタン系の薬。
    ・世界初のジタン系として、ラスミジタンが誕生した。日本でも2022120日片頭痛治療薬「レイボー錠50mg/レイボー錠100mg」(一般名=ラスミジタンコハク酸塩)の国内製造販売が承認、2022420日、薬価が定められた(標準量100㎎錠:1錠あたり570.9円=保険3割負担で171円)。
    ・ラスミジタンはトリプタンと使い方は似ているが、頭痛発症1時間経過後に内服しても頭痛が改善されるという治験結果があり、内服のタイミングが難しいトリプタンと比べ、より簡単に使用できる。 薬理学的には、血管収縮作用がないことが最大の利点で、脳血管障害がある方、片麻痺性片頭痛の方にも使用が可能である。

おもな片頭痛治療薬一覧

分類名 細分類 製品名(先発品) 一般名(ジェネリック) コメント 妊婦 授乳
5-HT
1B/1D
作動薬
短時間作用型
トリプタン
イミグラン スマトリプタン 強め。用量2段階。点鼻・注射も。 B3 L3
マクサルト リザトリプタン 強め。用量1段階。口で溶ける。 B1 L3
レルパックス エレトリプタン やや弱め。用量2段階。 B1 L3
長時間作用型
トリプタン
ゾーミッグ ゾルミトリプタン 強め。用量2段階。口で溶ける。 B3 L3
アマージ ナラトリプタン やや弱め。用量1段階。 B3 L3
5HT-1F
作動薬
ラスミジタン レイボー

安全性が高く、タイミングが少し遅れても有効だが、副作用に注意。50~200㎎までの用量調整。

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エルゴタミン クリアミン 現在ではあまり使われない × L4
予防薬
(CGRP)
CGRP抗体 エムガルティ ガルカネズマブ 月1回の注射剤(初月は2本)。 B1 ND
アジョビ フレマネズマブ 3か月に1回という方法も可能。 B1 ND
CGRP受容体抗体 アイモビーグ エレヌマブ 注射時の疼痛が少ない。 B1 ND
予防薬
(循環器系)
Caチャンネル
ブロッカー
ミグシス ロメリジン 効果発現まで1か月。用量2段階。 回避
アムロジン アムロジピン 血圧低下に注意。 C L3
ARB オルメテック オルメサルタン 血圧低下に注意。 D L3
βブロッカー インデラル プロプラノロール 徐脈、血圧低下に注意。喘息不可。リザトリプタンと併用不可。 C L2
予防薬
(神経系)
抗てんかん薬 デパケンR、セレニカR バルプロ酸ナトリウム 予兆・前兆を抑え、片頭痛の頻度と減らす。バルプロ酸は定期的な血液中濃度測定が必要。 D L4
トピナ トピラマート D L3
リボトリール クロナゼパム B3 L3
抗うつ薬
(三環系)
トリプタノール アミトリプチリン 片頭痛に限らず、痛み全般を抑える。薬物乱用頭痛にも有効。 C L2
予防薬
(漢方)
漢方薬 呉茱萸湯 31:ごしゅゆとう 冷え性など体質に併せて使う。
桂枝人参湯 82:けいしにんじんとう
制吐剤 ドパミン拮抗薬 プリンペラン メトクロプラミド 嘔気への効果のほか、鎮痛薬と併用することで片頭痛を穏やかに緩和。 A L2
ナウゼリン ドンペリドン B2 L3
鎮痛薬 NSAIDs
消炎鎮痛解熱薬
ロキソニン ロキソプロフェン 胃潰瘍、腎障害、喘息に注意。
胃薬と併用。脱水を避ける。
(C) (L2)
ブルフェン イブプロフェン C L1
ボルタレン ジクロフェナク C L2
セレコックス セレコキシブ 12時間持続。比較的胃に優しい。 B3 L2
中枢性鎮痛解熱薬 カロナール アセトアミノフェン 肝障害に注意。胃潰瘍を起こさない。
1回500-1000mg、1日最大4000mg。
A L1

妊婦:オーストラリア基準(A,B1:可、B2,3:禁とは言えない、C,D:禁。)
授乳:Hale’s lactation risk rating(L1:可、L2:おそらく可、L3:おそらく安全、L4:おそらく危険)

不眠の薬

ベンゾジアゼピンについて

ベンゾジアゼピンについてベンゾジアゼピンという「ジャンル」の薬をご存知でしょうか。非常に多くの薬が発売されており、特に日本では「乱用」とさえ言われているほど、処方されているようです。その昔、「睡眠薬で自殺」などという話があったようですが、このベンゾジアゼピン以前の睡眠薬は、多量に内服すると死に至る危険なものでした。それが、「極めて安全」が売りのベンゾジアゼピンがデビューしたことで、劇的に状況が変わった、という歴史的な経緯があり、今では多量に内服することで死に至る薬はほぼ、ありません。
一方、近年非常に問題になっているのが、ベンゾジアゼピンの依存性です。文字通り、無いといられなくなるだけでなく、ある程度内服すると神経が慣れてきてしまい、効果が乏しくなってくること(耐性)も示されています。さらに、「せん妄」と呼ばれる「意識の変容」を起こしやすく、また酔っ払いのような「ふらつき」が大きな副作用であることから、特にご高齢の方には処方を避けるよう言われています。

既に外国では規制が非常に厳しく、日本から自分の内服用のベンゾジアゼピン薬剤を持ち出す際には特別な手続きが必要なことも多いようです。今後日本でも処方制限がより厳しくなるのは時間の問題と思われます。正しく使えば非常に良い薬なのですが。
ベンゾジアゼピンの作用は3つです。睡眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用です。その3つのどれを強調するか、また、持続時間をどう設定するか、によって様々な薬が開発・発売されています。

睡眠作用がメインなら、睡眠薬。その時間がごく短時間なら、睡眠導入剤。(ハルシオン、レンドルミン、サイレースなど)
抗不安作用がメインなら、抗不安薬。(デパス、ソラナックス、メイラックスなど)
筋弛緩作用がメインなら、筋弛緩薬。(テルネリン、ミオナールなど)

ベンゾジアゼピンについていずれも病院では日常的に見かける名前ばかりですが、上述の理由で、極力処方は避けるのが現在の潮流であり、既に長期に内服されている方は事実上ほぼ効いておらず、内服する「習慣」だけが「くせ」として残っていると考えられるために、極力減量するか他の薬剤に切り替えることが望ましいです。
なお、同じ系統の場合、作用時間が短いものほど「キレがよく」感じられるため、依存性が作られやすいようです。よく効くと実感できるものほど、クセになりやすい、ということですね。

なお、注意したいのが、これらの薬は全て自動車の運転や危険作業が禁止となっている点です。添付文章に禁止と書いてある以上、医師からは禁止とお伝えする他ありません。

新規の薬

上述のベンゾジアゼピンを置き換える薬として、新たな睡眠系の薬が発売されるようになりました。

マイスリー

非ベンゾジアゼピンの代表としてデビューし、睡眠作用以外はほとんどないことから、飛躍的に広まりました。しかし、血中半減期が2時間(で効果が切れる)というほど、あまりにキレがよいからか、離脱症状として「反跳性不眠」が目立つと言われています。

ルネスタ

アモバンという薬の改良版で、これも非ベンゾジアゼピンに分類されます。マイスリーよりはまだマイルドですが、マイスリー同様、離脱症状はあるようです。また、内服した後、翌日まで残るような苦みが特徴でした。アモバンよりはずっと改善されていますが、人によっては耐え難いという場合があります。

ベルソムラ

マイスリーやルネスタも、非ベンゾジアゼピンでありながら、ベンゾジアゼピンとほぼ同じ仕組み(GABA受容体刺激)で眠くなるものでした。一方、全く新しい仕組み(オレキシン受容体拮抗)で設計されたのがベルソムラでした。うとうとするような自然な眠気、という作用で、血中半減期が10時間という、比較的長く効くタイプです。2014年発売開始で、まだデビューほどない薬です。ふらつきやせん妄といったベンゾジアゼピン系の副作用が無い一方で、悪夢や翌日まで眠気が残る、という副作用があります。

ロゼレム

これは眠くなる薬ではありません。メラトニンという体内時計の昼夜のリズムを整えることで、睡眠薬からの離脱を目指せるといううたい文句でデビューしました。ですので、効果が出るのに数か月はかかります。

薬の使い方から分類する頭痛

外来通院だけでコントロールできる頭痛の場合、患者様にとっての選択肢は、「どの薬を飲むか、飲まないか」に尽きます。
そうすると、部位別の頭痛に効く薬の整理が必要です。それは、薬が頭のどこに効くかを分類することになります。

頭痛の原因となる病気

頭蓋骨の外にあって、頭痛の原因となるものは、皮膚、皮膚の神経、血管、筋肉しかありません。(頭蓋骨や頭蓋骨の中が原因の頭痛は、ふつう緊急入院が必要ですのでここでは省きます。心配でしたら脳神経外科医にご相談下さい。)それぞれで起こる頭痛と、代表的な薬をまとめると次のようになります。

部位別、頭痛に効く薬

痛い場所 病名の例 薬の例 商品名の例
皮膚 帯状疱疹 抗ウイルス薬、神経障害性疼痛治療薬 アメナリーフ、バルトレックス
皮膚の神経 後頭神経痛 神経障害性疼痛治療薬 (リリカ、ガバペン)
血管 片頭痛、群発頭痛 片頭痛治療薬、血管拡張薬 イミグラン、マクサルト、インデラル
筋肉 筋緊張型頭痛 NSAIDs、筋弛緩薬 ロキソニン、イブ、テルネリン
頭蓋骨
頭蓋骨の中
髄膜炎、脳腫瘍
くも膜下出血
緊急での精査が必要です

※NSAIDs: 非ステロイド性消炎鎮痛剤の総称
※この他にも病気はあります。確定診断は、医師に相談してください。また理論上有効でも実際には使わない薬、その逆もあります。決して自己判断はなさらないでください。

どこが何故痛いのかを知ることで、不必要な内服が減る

実際の診断や薬の種類・量の選択は医師の仕事ですが、どこが何故痛いのかをご自身でも知ることで、不必要な内服が減るはずですし、不安の緩和にもつながります。ご不明点や疑問点は、ご遠慮なくお尋ね下さい。

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